2018年 01月 25日
実は忍者
引き受けたはいいが、問題なのは『お国衣装』の方である。その日が近づくにつれ、『着物を着てくるのか?』と聞かれる。先生からも事務局長さんからも。浴衣じゃさすがに寒いしねぇと思っていたのだがハッと思い出した。何年も前に伯母から譲り受けたツーピースのウールの着物もどきがあるということを。伯母の祖母が作ってくれたというそれはその頃はかなり斬新だったのでは?と思われる薄い臙脂の二部式簡易着物。二部式の帯もある。これなら着付け方が多少怪しくても何とかなるに違いない。付け焼刃でちょっと練習して学校まで近いのを幸い、朝から色無地ウールの着物に羽織で登校した。元禄袖でも事務の仕事をするには邪魔なのでたすき掛けという格好。これではまるで旅館の仲居さんだと思って笑いがこみあげてくるがイギリスの小学校では限りなくエキゾチックに映ったと見え子供にも大人にも大好評であった。
朝、食費を払いに来たパキスタン出身のお父さん、私の格好を見るなり『今日は…素敵な格好で…あ!忍者ですね!』。誉め言葉のつもりに相違ないので涼しい顔でありがとう、と答えておいたがこの人がいなくなってから事務局長さんと二人涙を流して大笑い。事務局長さんは『そうか、秘密情報部員ならぬ忍者だったのね、本職は!』 気を悪くするなら言わないけど話してもいい?と打診されたのでかまわないと言ったら一日中誰かが事務室に来るたびに『ね、忍者がいるのよ忍者が!学校にとって不可欠な人材なのも道理でよね。』と笑っていた。私にとってのおおばあちゃんが作った色足袋と着物に帯。伯母がまだ二十歳前だった頃のと言っていたと思うから60年ほど前のものだろうか。立派にマンチェスターでもう一花咲かせたのであった。
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by tokyolaksa
| 2018-01-25 05:51
| 日記
2018年 01月 18日
私の中のチンパンジー
子供の通う学校で行われたこの講演会、思春期の子供の頭の中がどうなっているのか、その理解を深めるために、というのが副題。脳が情報や感情をどう伝達していくかを理解すれば対策も練りやすいですよ、ということなのだったが一時間ちょっとの講演ではちょっと短すぎた感あり。とはいえ簡単にまとめると、脳の中には感情のままに行動するチンパンジー、経験に基づいて結論を出すコンピューター、そして常識と理性の『大人』の3つの部分があり、『大人』の部分の発達が終了するのは二十台半ばで人によっては三十台になってから、とのお話。経験値も比較的浅い思春期の子供はほぼチンパンジーによって支配されているのである、とのこと。で、チンパンジーにとって大事なことは大人と違うということ、それから同じタイプの刺激でも脳のどこに苦痛を感じるかは年齢と脳の発達と共に変わるという話、がちょっと印象に残った。一般的に子供の時の方が想像力が豊かだとか、思春期に友情の関係で傷つきやすいとか、生理学的にも説明がつくことだったとはね。
このチンパンジー、大人になってからも存在するわけでどの程度チンパンジーをのさばらせてしまうかは本人次第。『しまった、と思いつつついついしてしまうことってありませんか?』甘いものを食べ過ぎてしまう、とか イライラして怒鳴ってしまうとか ついでにフェデラーがカッとしてラケットを叩き折った時のことまでも引き合いに出し、どれも『チンパンジーのせい』。だから大事なのは何がチンパンジーのなせる業かを意識してその上でどうやって内なるチンパンジーをのさばらせないか対策を練るか、ということ。かっちん、ときて足踏み鳴らして怒鳴ってしまい、後で反省、という場合の足踏み鳴らして怒鳴っていたのはあれは私じゃなくて私の内なるチンパンジーだったのか。講演しに来た人は自分の中のチンパンジーを制御して自分を良い方に変えていこう、そういうカウンセリングのようなことを生業としている方だったのでどちらかというと息子の中のチンパンジーより自分の中のチンパンジーとの付き合い方を考えてしまう話であった。
とはいえもうじき15歳の息子とは話がかみ合わないことも確かにままあって、その一部は内なるチンパンジーの大きさのせいかとも思われる。チンパンジーにとって大事な事と大人にとって大事なことの違いというのもわかっていれば役に立つかも。
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by tokyolaksa
| 2018-01-18 05:49
| 日記